1. はじめに
令和8年4月15日、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国ビザ)について、審査運用の見直しが行われ、いわゆる「明確化」が進みました。
近年、外国人雇用が増える一方で、技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)ビザについては、本来の趣旨と異なる就労が問題視されるようになっています。特に「実態は単純労働に近いのに技人国で許可されている」といったケースが社会問題になり、制度の運用が見直されてきました。
結論として、今回の改正(明確化)で最も大きなポイントは、日本語能力の要件がより明確に審査される点です。
これまで曖昧だった「日本語力」について、業務内容に応じた説明や証明が求められ、企業側も採用段階から日本語能力を前提に準備する必要が出てきます。
本記事では、令和8年4月15日改正(技人国ビザの明確化)について、行政書士の実務目線でポイントを整理し、企業担当者・外国人本人が準備すべき書類をわかりやすく解説します。
2. 制度の概要
技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザとは、外国人が日本で専門性のある仕事をするための在留資格です。
対象となる業務は大きく以下に分かれます。
- 技術分野:ITエンジニア、機械設計、システム開発など
- 人文知識分野:営業、企画、経理、人事、法務など
- 国際業務分野:通訳翻訳、海外取引、語学指導、マーケティングなど
つまり、現場作業・接客中心の単純労働ではなく、知識や経験を活かすホワイトカラー職が中心です。
技人国ビザを取得するには、以下のいずれかの申請が必要です。
- 海外から呼ぶ:在留資格認定証明書交付申請(COE)
- 日本国内で切替:在留資格変更許可申請
- 継続する:在留期間更新許可申請
そして今回の「令和8年4月15日改正」は、制度そのものを大きく変えるというより、**審査運用の明確化(ルールの具体化)**がポイントになります。
3. 取得条件
技人国ビザの取得条件は従来から存在しますが、改正によって「審査で重視されるポイント」がより明確になります。
技人国ビザの基本要件(従来からの要件)
- 学歴または職歴が基準を満たすこと
- 業務内容が技人国の範囲に該当すること
- 報酬が日本人と同等以上であること
- 雇用契約が安定していること
- 会社の事業実態があること
【改正の最大ポイント】日本語能力の明確化(重要)
令和8年4月15日の改正では、特に「日本語能力」がこれまで以上に重要な審査要素になると考えられます。
なぜ日本語能力が重視されるのか?
技人国ビザの対象業務は、基本的に以下のような業務が中心です。
- 社内外との調整・会議
- 書類作成・契約書確認
- 顧客対応(法人営業など)
- 企画書・提案書作成
- 社内報告、マネジメント
つまり、単純作業ではなく言語能力を前提とする業務が多いため、一定の日本語力がなければ業務遂行が困難です。
そのため、今後は「学歴がある」「会社が採用した」だけでは弱く、
日本語で業務が遂行できる根拠が必要になります。
日本語能力が問われやすい職種(特に注意)
- 営業職(法人営業・新規開拓)
- 総務・人事・経理など管理部門
- 企画・マーケティング
- 接客を含む業務(ホテル、観光、販売管理など)
- 日本人社員との連携が必須の職種
これらは業務の性質上、日本語能力の説明ができないと「単純労働では?」「補助業務では?」と疑われやすくなります。
補足:今後想定される「求められる日本語水準」
制度上「必ずN2」などと断定はできませんが、実務上は次のような傾向が強まる可能性があります。
- 社内業務中心:N3〜N2程度の説明が求められるケース増加
- 対外業務(営業・顧客対応):N2以上の証明が求められる可能性が高い
- 通訳翻訳など国際業務:N1相当の実務能力が問われることもある
つまり、改正後は「日本語能力が低い人を技人国で採用する」ことが、以前より難しくなる可能性が高いです。
4. 必要書類
技人国ビザの申請では従来から多くの書類が必要ですが、改正後は特に「日本語能力を説明する補足資料」が重要になると考えられます。
技人国ビザ申請の主な必要書類
- 在留資格認定証明書交付申請書(または変更申請書)
- 写真(4cm×3cm)
- パスポート(海外の場合)
- 在留カード(国内変更の場合)
- 卒業証明書・成績証明書
- 履歴書・職務経歴書
- 雇用契約書または内定通知書
- 労働条件通知書
- 職務内容説明書
- 会社案内・登記事項証明書
- 決算書
【改正後に重要性が増す】日本語能力を示す資料
- JLPT(日本語能力試験)の合格証明(N1〜N3)
- JFT-Basicなどの試験結果
- 日本語学校の修了証明書
- 日本の大学・専門学校卒業証明書
- 業務上必要な日本語能力を説明した理由書
- 面接評価シート(社内資料として用意できると強い)
注意点:日本語試験が必須とは限らないが「説明」は必須になりやすい
今後は、試験合格証明がない場合でも、
- 日本語で業務ができる根拠
- 社内での教育体制
- 日本語を使用する業務内容
これらを理由書で補足しないと、審査官が納得しないケースが増える可能性があります。
5. 費用
技人国ビザ申請にかかる費用は以下が目安です。
入管へ支払う費用
- 在留資格変更許可申請:4,000円
- 在留期間更新許可申請:4,000円
- COE申請:原則無料
行政書士に依頼する場合の相場
- 技人国COE申請:10万〜20万円
- 技人国変更申請:10万〜18万円
- 更新申請:5万〜10万円
改正後に増えやすい追加費用
- 日本語能力に関する理由書作成
- 職務内容説明書の詳細化
- 追加資料請求への対応
- 不許可後の再申請
今後は「日本語能力を含めた説明資料作成」が増えるため、従来より手間がかかるケースが増える可能性があります。
6. 手続きの流れ
技人国ビザの申請の流れは次の通りです。
- 採用職種が技人国に該当するか確認
- 学歴・職歴が要件を満たすか確認
- 雇用契約内容(給与・業務内容)を整備
- 職務内容説明書を作成
- 【重要】日本語能力を整理し説明資料を準備
- 入管へ申請(COE・変更・更新)
- 審査(1〜3か月程度)
- 追加資料請求があれば対応
- 許可・在留カード交付
改正後は、手続きの中でも「日本語能力の整理」が実務上の必須ステップになる可能性があります。
7. よくある失敗
改正後、特に不許可につながりやすい失敗は「日本語能力を軽視した採用」です。
改正後に増えると考えられる不許可・失敗例
日本語能力が業務に足りない
- 営業職なのに日本語がほぼ話せない
- 社内連絡が英語だけでは成立しない会社なのに採用した
- 顧客対応が必要なのにN4レベルで申請した
職務内容が曖昧で「単純労働」と疑われる
- 「販売・接客・清掃なども含む」内容になっている
- 実際は現場作業中心だが、書類では事務職と記載している
日本語能力の証明がない
- 試験結果も学校証明もなく、説明が不足
- 面接で日本語を確認した証拠がない
会社側の教育体制が説明できない
- 日本語研修がない
- OJTが不明確
- 指導担当者がいない
特に危険なケース:採用後に「日本語ができない」と判明する
採用時は問題ないと思っていたが、実際は社内で意思疎通ができず、
結果として「単純作業に回す」→「在留資格外活動」になってしまうケースがあります。
この場合、更新時に不許可になる可能性が高く、企業にとっても大きなリスクです。
8. 行政書士に依頼するメリット
令和8年4月15日の改正により、技人国ビザは「学歴・職務内容」だけでなく、
日本語能力を含めた総合的な説明が求められる流れが強まります。
行政書士に依頼することで、次のメリットがあります。
- 職務内容が技人国に該当するか正確に判断できる
- 日本語能力の証明方法をケース別に提案できる
- 日本語力が弱い場合の補強資料(理由書)を作成できる
- 会社の受入体制(研修・指導体制)を整理できる
- 不許可リスクを事前に回避できる
- 追加資料請求にもスムーズに対応できる
今後は「採用=許可」ではなく、採用戦略そのものを在留資格基準に合わせる必要が出てきます。
9. まとめ
令和8年4月15日改正(明確化)により、技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザは、審査基準がより具体化される流れになります。
中でも最大のポイントは、日本語能力要件が明確に重視されることです。
結論として押さえるべき点は以下です。
- 技人国は専門性のあるホワイトカラー職向けの在留資格
- 改正で「日本語能力」がより明確に審査対象になる
- 特に営業・管理部門・顧客対応職は日本語力が必須
- 試験合格証明や理由書などで説明できる準備が重要
- 企業側も採用時点から日本語能力を確認する必要がある
当事務所では、改正動向を踏まえた技人国ビザ申請サポートを行っております。
「この仕事内容で許可されるか不安」「外国人採用を継続したい」という企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
代表 上田信吾
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